テニスでは最初の動きほど重要だと考えています。今回は両手バックハンドストロークにおける最初の動きであるテイクバックについて、私のおすすめをお伝えしたいと思います。
細かく見るとトッププロの中でも様々異なるテイクバックを行っており、それぞれメリット・デメリットがあります。その為、このテイクバックが正解というのはありませんが、私のおすすめの両手バックハンドのテイクバックは『錦織 圭 選手』です。
説明は後にして、まずは見てみましょう!
錦織 圭選手の両手バックハンド
順を追って説明していきます。
① ユニットターンを行う(1:13~1:15)
ボールが向かってくると認められた瞬間に行います。
ここは重要で一般プレーヤーはタイミングが遅れる場合が多いです。
具体的には左股関節から身体の方向を打球方向に対して60°程度(スタンスや状況で異なります)回して準備します。
この時ラケットヘッドは立ちつつ、両手は身体の正面でおへそ辺りに位置します。ラケットヘッドが立った状態で身体の方向が変わるだけで、まだ肩を入れたり腕を引くという動作は入りません。足が固定されずに柔軟に動ける状態で、さらに言うと上半身や両腕もリラックスさせた状態です。
※この動画では移動が必要がないため、すぐに次のモーションであるテイクバックに入ります。
② テイクバックを行う(1:15~1:19)
ここでも腕を引くという感覚ではなく、右肩を入れて右肘を伸すというシンプルな動きのみです。結果としてラケットを握っている右手が左腰骨の上前方付近に位置します(この位置が目安)。映像では1:18初めまでの動きで、ここでラケットヘッドが最高到達点(目の高さ)に達しています。その後、両手の脱力+ラケットの重さを利用して両肘が伸び、ラケットヘッドがダウンします。この状態が次のフォワードスイングを行う上で理想的な形になります。
ここまでがテイクバックの動作です。次にポイントについて説明していきます。
Ⅰ. 先にユニットターン
ボールに追いついてからユニットターンおよびテイクバックを行うと余裕がないため、振り遅れてしまう可能性が高くなります。ボールが向かってくると認められた瞬間にユニットターンを行う事がコツです。ユニットターンが完了している状態でボールの位置へ移動し、テイクバックのタイミングを計ります。ユニットターンを行っている状態では楽に動けるという事もポイントです。(テイクバックまで行った状態は肩が入った状態であり、楽に動けません)
Ⅱ. ラケットは常に身体の前側に位置する
テイクバックの最終段階でもラケットは常に身体の前側に位置します。両手バックハンドの場合はラケットが身体の後ろ側に行くようなテイクバックになることは少ないですが(右手が防いでくれるから)、腕(主に前腕)でテイクバックを行うなどの誤った動きを行うとラケットが身体の後ろ側に位置する場合があります。
1度ラケットが身体の後ろ側に移動してしまうと、この後のフォワードスイングからインパクトの難易度が上がります。人は身体の前側の感覚は強いですが、後側の感覚は極端に弱いためです。また、インパクトまでの物理的な距離も身体の後ろ側へ引いてしまうと大きくなります。
勘違いしてほしくないのは、肩が入るので相手側から見るとラケットが後ろ側に見えますが、打つ本人からすると身体の正面側にラケットが位置するということです。
Ⅲ. テイクバックの最終段階は左肘が伸びて脱力した状態にする
両手バックは左手側を大きく使ってパワーを出力します。その為の準備としてのテイクバックの最終段階では左肘が伸びて脱力した形をとっておくことが重要です。この形をとっておくことによってこの後のフォワードスイングからインパクトで左手側の大きい筋肉である上腕を使うことができるからです(左肘が曲がっている状態だと上腕を使うのは難しい)。また、手首も脱力した状態にしてラケットヘッドが少し下に下がります。
Ⅳ. テイクバック最終段階まで右手のグリップはゆるくしておく
両手バックの右手側はサポートになりますが、最初から右手のグリップをがっちりと固定するとテイクバックが窮屈になるため、テイクバックの最終段階であるラケットがダウンしてからしっかりと握ったほうが良いです。右手のグリップは基本はコンチネンタルグリップと言われていますが、テイクバック最終段階まではコンチネンタルグリップに近い形でゆるくフリーに動く状態にし、フォワードスイング開始時点からしっかり握ります。右手のグリップは打とうと思っている球(ストレート、クロス、アングル、ロブ、打ち込みなど)によって多少変化させるのが私のおすすめです。変化させることによって後のフォワードスイングからフォロースルーで右手側が左手側の邪魔にならないようにできるというのもメリットです。
それでは 錦織 圭 選手との違いという部分に着目して、他のプロのテイクバックも見ていきましょう。
ノバク・ジョコビッチ選手の両手バックハンド
ユニットターンですが、ラケットヘッドはあまり立たせずに両肘がほぼ伸びた状態で行われています。この部分は錦織選手とは異なる動きになります。
後のフォワードスイングの軌道をそのまま通るシンプルな動きで、ラケット面が把握しやすく、安定性が高いのが特徴です。
ユニットターン時に楽に動けることや素早くユニットターンを行うということに関しては、錦織選手のようにラケットヘッドを立ててラケットが身体から近い状態のほうが有利だと思います。
テイクバック時のラケットヘッドの最高到達点は錦織選手と同じように目の高さに達しています(動画の0:51)。
また、テイクバックの最終段階では左肘が伸びて脱力した状態になることも共通しています(左手側を大きく使ってパワーを出力できる状態)。
※最近のジョコビッチ選手の両手バックハンドのテイクバックフォームでは、上記の動画と異なりラケットヘッドが立つ状態でユニットターンに入るフォームに変化しているようです。
カルロス・アルカラス選手の両手バックハンド
ユニットターンは錦織選手と類似しており、ラケットヘッドは立ちつつ、両手は身体の正面でおへそ辺りに位置します(動画の0:07)。
テイクバックのラケットヘッドの最高到達点は頭のてっぺんより少し上の高さに達しています(動画の0:11)。また、左手側の脇の空き方が錦織選手より空いており、右肩の入り(右手の押し)が大きいです。
ラケットの上下運動が大きい分、ボールの威力は上がりますが、インパクトの難易度も上がると考えられます。
その後のテイクバックの最終段階では左肘が伸びて脱力した状態になることは共通しています(左手側を大きく使ってパワーを出力できる状態)。
ラファエル・ナダル選手の両手バックハンド
ユニットターンはラケットヘッドを殆ど立たせず、後のフォワードスイングの軌道をそのまま通るシンプルな動きになっています。以前のジョコビッチ選手と類似していますが、ジョコビッチ選手より更にラケットヘッドが低い状態になっています。
テイクバックのラケットヘッドの最高到達点も腰の高さで低い状態をキープしています(動画の1:18)。殆ど上下運動がないため、面の安定性が抜群だと考えられます。ライジングでの対処もやりやすいと思われます。
ユニットターン時に楽に動けることや素早くユニットターンを行うということに関しては、錦織選手のようにラケットヘッドを立ててラケットが身体から近い状態のほうが有利だと思います。
アレクサンダー・ズべレフ
ユニットターンはラケットヘッドは立ち、特徴的なのは打球方向にラケットヘッドを若干残す動きがあります。(動画の1:05)。
テイクバックでもラケットヘッドが打球方向に少し残りつつ、最高到達点は頭のてっぺんより少し上の高さに達しています(動画の1:10)。
フォアハンドストロークではこのラケットヘッドを打球方向に残す動作をよく行われていますが、両手バックハンドストロークでは右手が邪魔をするので、この動きを行う選手は珍しいです。
メリットとしてはラケットヘッドの操作が軽くなることです。フォワードスイング時にラケットヘッドが後ろ側に遅れてしまうとインパクトの安定性がなくなるので、インパクトが安定しない方はこの動きを試してみるとインパクトが安定することがあります。(両手バックの場合は両手でラケットヘッドが操作できるのでラケットヘッドが遅れないように操作できる方は必要ないと思います)
デメリットとしてはテイクバック時に右手前腕の回外や上腕の外旋が加わることによるテイクバックの窮屈さがでてくると考えます。
いかがだったでしょうか?それぞれの選手で共通点・異なる点がありますが、色々試して自身に合うフォームを見つけてみてください。その際は自身のフォームを動画に撮ってみることをおすすめします。実際に撮ってみるとイメージしている動きとかなり違うことが多いです(私もそうでした)。
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