テニスにおいて、ストリング(ガット)はボールに直接触れる唯一のパーツです。ラケットの性能を引き出す「エンジン」のような役割を果たしていて、ここを変えるだけで、ショットの威力もコントロールも、腕への負担も変わります。
ラケットは一度買えば数年使いますが、ストリングは数か月ごとに選び直すものです。それだけ試せる回数が多いのに、ラケットほど「スペックを見て選ぶ」習慣が広まっていません。
このページでは、選ぶときの比較観点から、スピンがかかる仕組み、プロ選手のセッティング例までをまとめて整理します。
先に断っておきます。ストリングは、メーカーが公表している情報がラケットより少ないです。ストリング図鑑を作るために国内で買える10メーカーの公式サイトを1製品ずつ調べましたが、対象レベル(初級〜上級)を公表しているメーカーは1社もありませんでした(ヘッドだけは「Tour / Performance / Team」という独自の分類を出していますが、初級〜上級とは別の物差しです)。断面形状も、書いているメーカーと書いていないメーカーがあります。ですからこのページでも、公式に書かれていないことは「書かれていない」と書きます。
1. まず「求める性能」から逆算する
ストリングを選ぶときは、次の4つのうちどれを優先したいのかをはっきりさせるのがスタート地点です。すべてを同時に最大化することはできず、必ずどこかを諦めることになります。
- パワー(反発力): ボールを楽に遠くまで飛ばす力、あるいは球速を上げる力。
- コントロール: 狙ったコースへ正確に打ち込む力や、ボールが飛びすぎないように抑え込む力。
- スピン: ボールに回転をかけ、コート内に急激に落としたり、バウンド後に高く弾ませたりする力。
- 耐久性: ストリングが切れるまでの長さ、および性能(テンション)が維持される期間。
この4つは、ストリング図鑑の「特性」による絞り込みにもそのまま使っています(スピン/パワー/コントロール/耐久性/快適性)。
2. 選び方の基本になる4つの比較観点
ストリングの性能は、「素材」「構造」「太さ(ゲージ)」「テンション」の4つの組み合わせでほぼ決まります。順番に見ていきます。
① 素材
まずここから決めます。ストリングの性格の大半は素材で決まります。価格も、切れやすさも、腕への負担も、素材が違えば別物になります。
ナイロン(シンセティック)
- 特徴: もっとも一般的で、価格も手頃です。反発力があり、扱いやすいバランスの取れた素材です。
- 向いている人: 初心者から上級者まで幅広く。最初の1本にも、腕をいたわりたいときにも候補になります。
ポリエステル(通称「ポリ」)
- 特徴: 非常に硬く、耐久性に優れています。スイングスピードが速いプレーヤーが強く打ってもボールが収まりやすく、スピンもかけやすいのが特徴です。
- デメリット: 腕への負担は他の素材より大きくなります。また、切れていなくてもテンションが落ちるのが早く、性能のほうが先に落ちます。
- 向いている人: しっかり振り切れるプレーヤー、ストリングをよく切ってしまう人。
ナチュラル(牛の腸)
- 特徴: 反発力・テンション維持力・衝撃吸収性のすべてで最高峰とされます。非常に柔らかい極上の打球感です。
- デメリット: 高価で、湿気に弱いです。「シープガット」と呼ばれますが、現在の原料は牛です。
ケブラー(アラミド)
- 特徴: 防弾素材にも使われるアラミド繊維です。ほとんど伸びず極端に切れにくい反面、打球感は硬く、腕への負担も大きくなります。
- 使い方: 単体ではなく、縦糸だけケブラー、横糸はナイロンという組み合わせで使うのが一般的です。どれだけ替えても切れてしまう人の最終手段にあたります。
市場の実際: 国内で流通している主力はポリエステルとナイロンです。ストリング図鑑に収録した50本の内訳も、ポリエステル28・ナイロン(マルチ)16・ナイロン(モノ)5・ナチュラル1で、ケブラー単体の製品は収録条件を満たすものが見つかりませんでした。
② 構造(主にナイロン)
素材が「何でできているか」なのに対し、構造は「それをどう束ねてあるか」です。同じ「ナイロン」でも、構造が違えば別物になります。
モノフィラメント
- 太い1本の芯の周りに、細い糸を巻き付けた構造です。弾きが良くシャープな打球感で、耐久性もそこそこあります。価格も抑えられています。
マルチフィラメント
- 極細の繊維を数百〜数千本束ねて作られた構造です。ナチュラルガットに近い柔らかい打球感と高い反発力を持ち、腕に優しいのが特徴です。
- 一方で、表面が毛羽立ちやすく、耐久性はモノフィラメントに劣ります。
ここが分かると: 「ナイロン」とだけ書かれた製品を見て、柔らかい側なのか耐久側なのかを自分で判断できるようになります。束ねた本数が多いほど柔らかく、切れやすいと覚えておくと迷いません。なおポリエステルはほぼすべてモノフィラメントなので、構造で選び分けるのは主にナイロンの話になります。
③ 太さ(ゲージ)
同じ製品でも太さは選べます。ストリングの太さは「ゲージ」と呼ばれ、主に0.05mm刻みでラインナップされています。飛びと耐久性に直結する数値です。
細い(1.15〜1.20mm前後)
- メリット: 反発力が高く、ストリングが動きやすいためスピンがかかりやすいです。打球感はクリアで弾きが良くなります。
- デメリット: 耐久性が低く、切れやすいです。
中くらい(標準・1.25mm前後)
- パワー・コントロール・スピン・耐久性のバランスがもっとも取れている「黄金スペック」です。1.25mmはほぼすべての製品に用意されています。
- 迷ったら、まずはこの太さから始めるのが基本です。
太い(1.30〜1.35mm前後)
- メリット: 耐久性が非常に高く、ストリングがたわみにくいため打球感がマイルド(重め)になり、コントロールが安定します。
- デメリット: 反発力や自然なスピン性能は、細いものに比べて少し落ちます。
選び方のコツ: まず1.25mmで張ってみて、すぐ切れるなら太く、切れないまま何か月も使えるなら細くしてみる、という決め方が分かりやすいです。ストリング図鑑の絞り込みは「細 〜1.22mm/標準 1.23〜1.27mm/太 1.28mm〜」の3区分にしてあります。
④ テンション(張りの強さ)
これだけは「製品を選んだあと」に自分で決める数値です。ストリングの製品ページには書かれておらず、ラケット側の仕様として推奨範囲が案内されています。現代のラケットとストリングの進化により、全体の平均テンションは昔より少し下がってきています。
低い・緩め(40〜45ポンド以下)
- 打球感: トランポリンのようにストリングがたわみ、ボールを包み込みます。打感が非常に柔らかくなります。
- メリット: 少ない力でボールが深く飛びます。スイートスポットが広く、腕への衝撃が少なくなります。
- デメリット: ボールが飛びすぎてアウトしやすく、繊細なコントロールが難しくなります。
- 向いている人: 腕への負担を減らしたい人、パワーを補いたい人、ボレーヤー。
中くらい・標準(46〜52ポンド)
- 打球感: 現代テニスのもっともスタンダードな基準です。パワーとコントロールのバランスが取れています。
- メリット: 飛びと抑えのバランスが良く、スピンも自然にかかります。ストリングの性能を素直に引き出せます。
- デメリット: 極端に尖った特徴はありません。
- 向いている人: すべてのプレーヤーの基準。まずはここから張って微調整していくのが王道です。
高い・硬め(53ポンド以上)
- 打球感: たわみが少なくトランポリン効果が薄れます。打感がシャープで、板のように硬くなります。
- メリット: 力加減がダイレクトにボールへ伝わります。ボールの飛びを抑え込みやすくなります。
- デメリット: 自分でボールを飛ばす筋力が必要です。芯を外すと腕に強い衝撃が来ます。
- 向いている人: ハードヒッター、フラット系でコントロールを極めたい人。
注意: 同じ「50ポンド」でも、ラケットの機種が違えば意味が変わります。フェイスが大きいラケットほどストリングは長くなり、同じテンションでもよくたわむためです。まずはラケットの推奨範囲の真ん中から始めて、2ポンド単位で動かすと違いが分かりやすくなります。ラケット側の見方はテニスラケットの選び方にまとめています。
3. ラケットや環境による影響
同じストリングでも、張るラケット・振る速さ・季節で結果が変わります。ここを知らないまま製品だけを替えても、狙った変化になりません。
ラケットの「ストリングパターン」との相性
- オープンパターン(16×19など): マス目が粗いため、ストリングがよく動き、スピンとパワーが出やすくなります。ストリング同士の摩擦が大きく切れやすいため、耐久性の高いポリエステルや太めのゲージと相性が良いです。
- デンスパターン(18×20など): マス目が細かく面が硬く安定するためコントロールに優れます。ボールは飛びにくくなるので、反発力の高い細めのゲージやナイロン、低めのテンションと組み合わせるのがおすすめです。
自分のラケットのパターンが分からない場合は、ラケット図鑑で機種ごとに確認できます。パターンそのものの説明はラケットの選び方の「ストリングパターン」にあります。
スイングスピードによる違い
- スイングが速い人: インパクトの衝撃が大きいため、硬いポリエステルでも十分にたわませることができ、強力なスピンとコントロールの恩恵を受けられます。
- スイングがゆっくりの人: ポリエステルを張ってもストリングがたわまず、「ただの硬い板」になります。パワーも出ず、腕を痛める原因になります。ナイロンやナチュラルのほうが圧倒的に良いパフォーマンスを発揮します。
「上級者向けのポリを張れば上達する」わけではない、というのがここの要点です。ポリエステルは、振れる人が張って初めて性能が出ます。
温度変化(季節)による違い
- 夏場(高温): ストリングが柔らかくなり、ボールが飛びすぎることがあります。いつもより2〜3ポンド高く張るプレーヤーが多いです。
- 冬場(低温): ストリングが硬く縮こまり、ボールが飛ばなくなります。いつもより2〜3ポンド低く張るか、ポリエステルからナイロンに変更するなどの工夫が要ります。
「同じセッティングなのに急に飛ばなくなった」と感じたときは、ストリングが劣化したのではなく季節が変わっただけということがあります。
4. スピンの仕組み:「スナップバック」と「エッジバイト」
スピンのかかりやすさでストリングを選ぶなら、いま主流になっている2つの物理的なメカニズムを知っておくと、製品説明の読み方が変わります。
- スナップバック: ボールが当たった瞬間に縦のストリングが横にズレて、それが一気に元の位置に戻る力で強烈な回転をかける、という理論。
- エッジバイト(引っかかり): 断面が多角形(五角形や八角形など)になっているストリングの角が、直接ボールのフェルトに噛み付いて回転をかける、という理論。
結論から言うと、完全な共存は難しく、物理的なトレードオフがあります。
スナップバックを起こすには「ストリング同士が滑りやすいこと」が条件です。ところが多角形ポリには、ストリングの交差点で角と角が引っかかってロックしてしまい、元の位置に戻りにくくなるという弱点があります。
これを解決するため、現在の多角形ポリは表面に特殊なコーティングを施して極限までツルツルにし、「張った直後」であれば両者を高い次元で共存させています。しかし数時間プレーしてコーティングが剥がれ、溝ができると、急激にスナップバックが起きなくなります。
そのため上級者のなかには、「最初から最後まで安定してスナップバックを起こし続けるために、あえて引っかかりのない丸型で表面がツルツルのポリエステルを選ぶ」という人が多くいます。
瞬間的な最大スピン量なら新品の多角形ポリ、試合を通して安定したスピンなら丸型の滑るポリ、というのが現在の理論の結論です。
ボレーや短いスライスなど、スイングが小さいショットではスナップバックはほとんど機能しません。ストリングを横にズラすほどの強い衝撃が加わらないためです。
一方で、多角形ポリによるエッジバイトは小さなスイングでも有効です。ボールの下を撫でるようなスイングでも角が引っかかり、鋭いアンダースピンをかけられます。
ただし、ボレーヤーが多角形ポリを選ぶかというと、必ずしもそうではありません。ポリエステルは非常に硬いため、ボレーで重要な繊細なタッチや少ない力で飛ばすパワーが失われてしまうからです。
そのためネットプレーを重視する選手は、エッジバイトを捨ててでも、柔らかなタッチが出せる丸型のナイロンやナチュラルを選ぶ傾向にあります。
断面形状の読み方
エッジバイトを狙う製品は、断面に角を付けています。角の数が少ないほど1つの角が鋭く、引っかかりは強くなります。逆に角が多いほどラウンド(丸)に近づき、当たりは穏やかになります。4角形がもっとも角張っていて、8角形がもっとも丸に近い、という順です。
- ラウンド(丸): もっとも一般的な形。角がないぶん引っかかりは穏やかで、素材そのものの性格がそのまま出ます。
- 多角形(4角・5角・6角・7角・8角): 角でボールに噛み付く形。数字が小さいほど攻撃的です。
- ツイスト(ねじれ): 角のついた断面を、ストリング自体をねじって作ったもの。ボールに当たる角の向きが常に変わります。
- 表面加工: 断面は丸に近いまま、表面に凹凸やコーティングを施して引っかかりを足したもの。
調べていて分かったこと: 断面形状を公表しているかどうかは、メーカーによってまったく違います。ストリング図鑑の50本のうち、形状が分かったのは23本でした。多くのメーカーは角のある製品にしか書かず、しかもスペック欄ではなく、製品説明の文章の中にだけ書かれていることがあります。
一方でヘッドとソリンコはラウンドも含めて明記しています。ソリンコにいたっては、同じ素材で断面だけを変えた HYPER-G(5角形)と HYPER-G ラウンドを並べ、「引っかかり/弾き」「高弾道/低弾道」という違いまで公式に書き分けています。つまり「書かれていない=ラウンド」とは言い切れません。当サイトでは公式に記載があるものだけを入れ、書かれていない製品は空欄にしています。
5. 買い方とコスト
ストリングはラケットと違い、何度も買い直す消耗品です。1回の性能だけでなく、続けたときの出費まで含めて考えると選び方が変わります。
単張りとロール — 比べるのは「1張りあたり」
- 単張り(パッケージ): ラケット1本ぶん。12m前後が1パックに入っています。
- ロール: 大きな巻きで売られているもの。200mまたは240mが一般的です。
大事なのは、ロールの価格そのものではなく「1張りあたりいくらになるか」です。計算はかんたんです。
- ロール価格 ÷(ロールの長さ ÷ 単張りの長さ)= 1張りあたりの金額
- 例: 200mのロールを12mずつ使えば16張り分。ロールが¥30,800なら1張り約¥1,925です。単張りで¥2,970の製品なら、1回あたり1,000円以上の差になります。
この数字は誰も計算して出してくれません。メーカーも販売店も、単張り価格とロール価格を並べて載せるだけです。そこでストリング図鑑では、全製品のスペック表に「1張りあたり」を自動計算して表示しています。ロール1張りが安い順に並べ替えることもできます。
ただしロールは16〜20張り分あります。1人で使い切るのは大変なので、仲間と分けるか、張り替えの多い人向けの選択肢と考えてください。
単張りの長さ
単張り1パックの長さは12mが基本ですが、12.2mの製品もあります。ほんの20cmの違いですが、メーカーによってはっきり分かれます。
ラケット1本を張るのに必要な長さは11m前後なので、どちらを買っても1本ぶんとしては足ります。効いてくるのは、前の項目の「ロール1張りあたり」を計算するときです。12mか12.2mかで、同じ200mのロールから取れる張り数が変わります。
なおハイブリッド(縦と横で別のストリングを張る)にする場合は、単張りを2本買うことになります。どちらも半分ずつ余るので、同じ組み合わせを続けるなら2回目は余りで張れます。
価格
単張りの希望小売価格は、おおまかに3つの帯に分かれます。
- 〜2,500円: ナイロンのモノフィラメントや、定番のポリエステルが並ぶ帯です。
- 2,501〜3,500円: マルチフィラメントや、各社の主力ポリエステルが集まる帯です。
- 3,501円〜: 高機能なマルチフィラメントと、ナチュラルガットの帯です。
ただし、本当のコストは「価格 ÷ 保つ期間」です。安いストリングを毎月張り替えるほうが、高いストリングを半年使うより高くつくこともあります。
注意: ここで挙げているのはメーカーの希望小売価格(税込)です。実売価格は店によって大きく違い、定番品ほど値引きされている傾向があります。加えて、自分で張らない場合は張り工賃が別にかかります。
6. プロ選手のセッティング例
プロ選手は「素材・ゲージ・テンション」を緻密に組み合わせています。代表的な4つのパターンを紹介します。ハイブリッド(パターンC・D)で使われているストリングは、どれも市販されていて同じものが買えます。
パターンA:フル・ポリエステル(スピン&パワー重視)
太めの多角形ポリエステルを使い、超高速スイングでボールを削り取る現代の主流スタイルです。
- ラファエル・ナダル選手 — RPMブラスト 1.35mm / 55ポンド
- カルロス・アルカラス選手 — RPMブラスト 1.30mm / 51〜53ポンド
⭐ 2人とも同じ RPMブラストで、違うのはゲージとテンションだけです。ナダル選手が1.35mm、アルカラス選手が1.30mm。同じストリングでも、太さを変えるだけでセッティングは変わります。スペックと選べる太さはストリング図鑑(バボラ RPMブラスト)にまとめています。
パターンB:フル・ポリエステル(フラット&コントロール重視)
細めの丸型ポリエステルを張り、弾きとボールの乗りを両立させるスタイルです。
- ダニール・メドベージェフ選手 — レーザーコード 1.25mm / 約48ポンド
- ヤニック・シナー選手 — ホーク・タッチ 1.25mm / 約61ポンド
レーザーコードのスペックと選べる太さはストリング図鑑(テクニファイバー RAZOR CODE)にまとめています。
スペックと選べる太さはストリング図鑑(ヘッド HAWK TOUCH)にまとめています。
パターンC:縦ナチュラル × 横ポリ(究極のタッチ&スピン)
縦に最高級のナチュラル(反発・打感)、横にポリエステル(スピン・抑え)を組み合わせるセッティングです。
ロジャー・フェデラー選手
- 縦糸(ナチュラル): ウィルソン ナチュラルガット 1.30mm
- 横糸(ポリ): ルキシロン ALU POWER ROUGH(アルパワー・ラフ)1.25mm
- テンション: 48〜52ポンド前後
フェデラー選手の代名詞とも言えるセッティングです。縦のウィルソン・ナチュラル(製造元はバボラと言われています)で極上のタッチを生み出し、横糸には表面に凹凸加工(ラフ加工)が施された ALU POWER ROUGH を張ることで、スピン性能を底上げしています。
ALU POWER ROUGH のスペックと選べる太さはストリング図鑑(ルキシロン ALU POWER ROUGH)にまとめています。
なお一般向けに、この2本が1袋にセットになった「ウィルソン チャンピオンズチョイス(CHAMPION’S CHOICE DUO)」という商品も売られています。ハイブリッドは本来ストリングを2種類買うことになるので、まず試すだけならこちらが手軽です。
ここだけはメーカー公式に書いてあります。ウイルソン公式オンラインストアのチャンピオンズチョイスの商品説明には、「ロジャーフェデラー選手の選ぶ唯一無二の極上ハイブリッドセッティング」「New Wilsonナチュラル+LUXILONアル・パワー・ラフ」と書かれています(2026-09-21確認)。この章で挙げたセッティングのなかで、当サイトがメーカー公式で裏を取れたのはこの1件だけです。
ⓘ ちなみに同じ説明文は「グランドスラム17冠のチャンピオン」で止まっています。フェデラー選手が17冠だったのは2012年から2017年にかけてで、最終的な優勝は20回です。メーカーの商品説明は、書かれた時点のまま残るという分かりやすい例です。
ノバク・ジョコビッチ選手
- 縦糸(ナチュラル): バボラ タッチVS 1.30mm
- 横糸(ポリ): ルキシロン ALU POWER 1.25mm(時期によりラフも使用)
- テンション: 59・56ポンド
ナチュラルガットの最高峰であるバボラの「タッチVS(旧名称 VSタッチ)」に、ポリエステルの定番であるルキシロンの「ALU POWER」を組み合わせた、隙のないセッティングです。
フェデラー選手と構成はほぼ同じですが、ジョコビッチ選手はこれを非常に高いテンションで張ることで、彼特有の鉄壁のコントロールを実現しています。
それぞれのスペックはバボラ タッチ VSとルキシロン ALU POWERのページにまとめています。
パターンD:縦ポリ × 横ナチュラル(スピン&ソフト感)
アンディ・マレー選手
- 縦糸(ポリ): ルキシロン ALU POWER 1.25mm
- 横糸(ナチュラル): バボラ タッチVS 1.30mm
- テンション: 約60ポンド
縦糸にポリエステル(ALU POWER)を持ってくることで、ストローク時のスナップバック(スピン性能)と耐久性を最優先に確保しています。
ただしフルポリエステルだと打感が硬すぎたり、ボールが飛ばなかったりします。横糸に最高級ナチュラルのタッチVSを挟むことで、ホールド感とボールの飛びを補っています。
⭐ 使っているストリングはジョコビッチ選手と同じ2本で、縦と横が入れ替わっているだけです。同じ組み合わせでも、どちらを縦にするかで狙いが変わります。ナチュラルを縦にすればタッチ寄り、ポリを縦にすればスピンと耐久性寄りになります。
補足: この「ALU POWER(ポリ)× タッチVS(ナチュラル)」の組み合わせは、プロ・アマ問わずもっとも完成されたハイブリッドとして広く知られています。ハイブリッドを試すなら、まずこの2本のどちらを縦にするかから入るのが定番です。
この一覧の読み方: プロ選手が実際に張っているストリングとテンションは、メーカーが公式に発表するものではありません。ここに挙げたのは一般に伝えられている内容で、当サイトがメーカー公式で確認できたものではありません。市販モデルと仕様が異なる場合もあります。
また、フェデラー選手は2022年、ナダル選手とマレー選手は2024年に引退しています。現役当時のセッティング例として読んでください。
ⓘ メーカーの文章が古いまま残っていることもあります。ルキシロン公式の ALU POWER ROUGH の説明には、引退後もフェデラー選手の名前が残っています。「公式に書いてあるから最新」とは限りません。
なおストリング図鑑の各ページに載せている「使用選手」は、メーカー公式サイトに記載があるものだけに限っています。
7. プレースタイル別のおすすめ
| 重視するポイント | おすすめのストリング選び |
|---|---|
| 総合的なバランス・初心者 | ナイロン(モノフィラメント) まずは標準的な1.25〜1.30mmのナイロンモノを45〜48ポンドで張り、そこから好みに合わせて微調整するのが王道です。 |
| 腕への優しさ・ボレー重視 | ナイロン(マルチフィラメント)またはナチュラル テニス肘を予防したい方や、ネットプレーでの繊細なタッチ、ボールを包み込むようなホールド感を求める方に。 |
| 耐久性・強打・ストローク重視 | ポリエステル 頻繁にストリングが切れる方や、自分から振り抜くハードヒッター向け。細めのゲージ(1.20〜1.25mm)を選ぶとスピン性能が上がります。 |
| いいとこ取り(ハイブリッド) | 縦糸と横糸で異なる素材を組み合わせる 「縦にポリエステルで耐久性とスピン、横にナチュラルで柔らかさと飛び」のように、プレースタイルに合わせてカスタマイズします。 |
張り替えの目安
「切れたら替える」では遅い、というのがストリングの難しいところです。張った直後から徐々にテンションが落ちていくため、切れていなくても性能は先に落ちます。
- ナイロン・ナチュラル: 3〜6か月が目安
- ポリエステル: 1〜3か月が目安
- よく言われる別の目安に、「週にプレーする回数=年に張り替える回数」という考え方もあります(週2回なら年2回)。
切れていないのにボールが飛びすぎるようになった、ストリングがずれたまま戻らなくなった、表面が毛羽立ってきた——このあたりが替えどきのサインです。
まとめ
- まず優先順位を決める — パワー/コントロール/スピン/耐久性。全部は取れない
- 素材 — ここで性格の大半が決まる。まずポリエステルかナイロンか
- 構造 — 束ねた本数が多いほど柔らかく、切れやすい
- 太さ(ゲージ) — 迷ったら1.25mm。切れる人は太く、持つ人は細く
- テンション — ラケットの推奨範囲の真ん中から、2ポンド単位で動かす
- ラケット・スイング・季節 — 同じストリングでも結果が変わる。ポリは振れる人が張って初めて性能が出る
- スピン — 最大値なら新品の多角形ポリ、安定なら丸型の滑るポリ
- コスト — 比べるのはロール価格ではなく「1張りあたり」。本当のコストは「価格 ÷ 保つ期間」
- 張り替え — ナイロンは3〜6か月、ポリは1〜3か月
実際の製品を、この観点で絞り込めるようにしたのがストリング図鑑です。メーカー・素材・断面形状・特性・太さ・価格で絞り込めて、スペックはすべてメーカー公式ページから取り、確認日を入れてあります。
ラケット側の選び方は【決定版】テニスラケットの選び方に、機種ごとのスペックはラケット図鑑にまとめています。あわせてどうぞ。

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