
テニスラケットには多くのスペック(数値)がありますが、全てを同じ重要度で見る必要はありません。 「まずはここだけ見ればOK」という最重要項目から、「こだわりの領域」まで、見るべき優先順位が高い順に解説します。
【優先度 S】 まずはここから!身体に合わせる「基礎スペック」
ここを間違えると、まともに振れなかったり、怪我の原因になったりします。最優先でチェックしてください。
1. 重量(ウェイト)
「無理なく振り切れる中で、最も重いもの」を選ぶ ラケット選びの第一歩です。軽すぎると相手の球威に負け、重すぎると操作性が落ちて疲労や怪我に繋がります。
軽量(285g未満)
- メリット: 操作性が高く、素早いボレーや長時間のプレーでも疲れにくいです。
- デメリット: 相手の強いボールに対し、打ち負けやすくなります。
標準(285g〜305g)
- メリット: 男性なら300g、女性なら285g〜290gが基準。操作性と打ち負けないパワーのバランスが取れています。
- ターゲット: 一般的な成人男性・女性プレーヤー。
重量級(310g以上)
- メリット: ラケット自体の質量で、重くて威力のあるボールが打てます。相手のボールに弾かれにくい安定感があります。
- デメリット: 筋力がないと振り遅れやスタミナ切れの原因になります。
2. フェイスサイズ(ヘッドサイズ)
ボールの飛びやすさとスイートスポットの広さを決める 面の大きさは、テニスの難易度に直結します。
フェイスサイズとは、ラケットのガットが張られている面の大きさのことです。一般的に「平方インチ(sq.inch)」で表されます。
大きなフェイス(105平方インチ以上)
- 特徴: トランポリン効果が高く、ボールが楽に飛びます。スイートスポット(芯)が広いため、オフセンターショットでもミスになりにくいです。
- おすすめ: 初心者、シニア、非力な方、ボレー主体のダブルスプレーヤー。
標準サイズ(100平方インチ前後)
- 特徴: パワーとコントロールのバランスが最も良い「黄金スペック」と呼ばれるサイズです。
- おすすめ: 初中級者から上級者まで、現代テニスの標準的なサイズを求める方。
小さなフェイス(98平方インチ以下)
- 特徴: 空気抵抗が少なく振り抜きが良い反面、スイートスポットは狭くなります。自分の力でボールを飛ばす必要があり、高いコントロール性能を発揮します。
- おすすめ: スイングスピードが速い中上級者、コントロール重視のプレーヤー。
3. グリップサイズ
見落とし厳禁!パワー伝達と怪我予防の要 手の大きさに合っていないグリップは、テニス肘の原因や、ラケットがすっぽ抜ける事故につながります。
グリップサイズはラケットの柄(握る部分)の太さです。日本国内では主に G1, G2, G3 のサイズが流通しています。
- G1 (細め): 手の小さい女性やジュニア向け。
- G2 (標準): 最も一般的。多くの女性〜一般的な手の大きさの男性。
- G3 (太め): 手の大きな男性向け。
選び方のポイント
- 細すぎると: ラケットが手の中で回ってしまい、無駄な力が入りやすくなります(手首を痛める原因)。
- 太すぎると: リストワークが使いにくくなり、サーブの回転などがかけにくくなります。
- 目安: 握った時に、薬指の指先と親指の付け根の間に、指が一本入るくらいの余裕があるのが理想です。迷ったら細めを選び、後からオーバーグリップテープを厚めに巻いて調整するのが安全です。
【優先度 A】 プレースタイルを決める「性格スペック」
基礎スペックが決まったら、次は「どんなボールを打ちたいか」に合わせて選びます。
4. バランスポイント(重心)
「振りやすさ」と「ヘッドの走り」を決める 同じ重さ(300g)でも、バランスによって全く別物のラケットになります。
重量が同じ300gのラケットでも、「どこに重みがあるか」で全く別のラケットになります。バランスポイントは、グリップエンドから重心までの距離(mm)で表されます。
トップライト(重心が手元寄り:310mm〜315mm以下)
- 特徴: ラケットヘッドが軽く感じるため、ボレー戦での素早い操作や、サーブでのリストワークが使いやすいです。
- おすすめ: ネットプレーを好む方、操作性を重視する方。
イーブンバランス(中間:320mm前後)
- 特徴: 多くの「黄金スペック」ラケット(300g / 100平方インチ)で採用されている基準値。ストロークとボレーのバランスが良いです。
トップヘビー(重心がヘッド寄り:330mm以上)
- 特徴: 軽量ラケット(285g以下)によく見られます。ラケット自体は軽いですが、ヘッド側に重みを持たせることで、遠心力を利用してパワー不足を補う設計です。
- おすすめ: 軽いラケットで強いボールを打ちたい方、ベースラインプレーヤー。
5. フレームの厚さ
「パワー(飛び)」か「コントロール」か フレームの厚みを見るだけで、そのラケットの特性が一目でわかります。フレームの厚さは、ボールの飛び(反発力)と打感に直結します。
厚いフレーム(26mm以上)
- 通称: 中厚(ちゅうあつ)〜厚ラケ
- 特徴: フレームが硬く変形しにくいため、パワーロスが少なくボールがよく飛びます。
- 向いている人: 楽にボールを飛ばしたい方、スピンをグリグリかけたい方。
薄いフレーム(22mm以下)
- 通称: 薄ラケ
- 特徴: ボールを打った瞬間にフレームが「しなる」ため、ボールの接触時間が長く、コントロールがしやすいです。飛びは抑えめです。
- 向いている人: 自分の力で叩いていきたい方、フラットドライブ系でコースを狙う方。
中間のフレーム(23mm〜25mm)
- 特徴: 飛びとコントロールのバランス型。現在の市場で最も人気のある厚さです。
6. ストリングパターン
ストリングパターンとは、縦糸(メイン)と横糸(クロス)の本数の組み合わせです。 代表的なものに「16×19」と「18×20」があります。
粗いパターン(例:16本×19本)
- 特徴: 目が粗いため、ボールがガットに食い込みやすく、スピンがかかりやすいです。また、反発力も高くなります。
- おすすめ: スピンプレーヤー、ボールを高く弾ませたい方。
細かいパターン(例:18本×20本)
- 特徴: 目が細かいため、面圧が高く、ボールを潰して打つ感覚が得られます。スピンはかかりにくいですが、フラット系のコントロールとガットの耐久性に優れます。
- おすすめ: フラットドライブ主体のハードヒッター、ガットがすぐに切れてしまう方。
【優先度 B】 こだわり派のための「微調整スペック」
ここまで絞り込めばほぼ正解に辿り着いていますが、最後の「打感」や「個体差」にこだわりたい場合の指標です。
7. フレームの硬さ(RA値)
ラケットのしなり具合を数値化したもので、「RA値」と呼ばれます。
硬いフレーム(RA 69以上 / 高剛性)
- メリット: ボールの弾きが良く、パワーロスが少ないです。スピードボールが出やすくなります。
- デメリット: 衝撃が腕にダイレクトに伝わりやすいため、テニス肘などの怪我のリスクがやや高まります。
- 打感: 「カンッ」という乾いた、弾きの良い打感。
柔らかいフレーム(RA 63以下 / 低剛性)
- メリット: インパクトでラケットがよくしなるため、ボールを掴む感覚(ホールド感)が強く、コントロールしやすいです。衝撃吸収性が高く、肘や手首に優しいです。
- デメリット: パワーを出すには自分からしっかりと振る必要があります。
- 打感: 「ググッ」という重厚で、乗りの良い打感。
8. スイングウェイト
「スイングウェイト」は振ったときに感じる重さを数値化したものです。 たとえ同じ300gのラケットでも、重心がヘッド寄り(トップヘビー)にあるとスイングウェイトは重く感じ、グリップ寄り(トップライト)にあると軽く感じます。
スイングウェイトが重い
- 効果: 遠心力が働くため、一度スイングを始めれば強烈なパワーと破壊力を生み出します。ストロークで「伸び」を出したい場合に有利です。
スイングウェイトが軽い
- 効果: ヘッドが走りやすく、初動の操作性が抜群です。とっさのボレーや、手首を使ったスピンショットが打ちやすくなります。
選び方のコツ: 「持った感じは軽いのに、振ると重い」あるいはその逆があり得ます。カタログの重量だけでなく、実際に素振りをした感覚を大切にしましょう。
9. ラケット長(レングス)
標準的な長さは 27インチ ですが、それより長い「長ラケ(ロングラケット)」も存在します。
標準サイズ(27インチ)
- 市場の90%以上はこのサイズです。操作性とパワーのバランスが取れており、基本的にはこのサイズを選べば間違いありません。
長ラケ(27.25 〜 27.5インチ以上)
- メリット: リーチが伸びるため、遠いボールに届きやすくなります。また、スイングの回転半径が大きくなるため、威力が増します。
- デメリット: 胴体に近いボールの処理が難しくなり、操作性が若干落ちます。
ラケットの長さの上限は29インチ(約73.66センチメートル)と定められています。
その他全幅: 12.5インチ(約31.75cm)以内まで、打球面(ストリング面)の長さ: 15.5インチ(約39.37cm)以内、打球面(ストリング面)の幅: 11.5インチ(約29.21cm)以内までと定められています。
まとめ
ラケット選びは、テニスの上達と快適なプレーのために極めて重要です。ご紹介した9つのスペックを基に、あなたの運命の1本を見つけてください。

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